FX投資:FX の両建て 2 :スワップサヤ取り戦略
スワップサヤ取り戦略とは
FXにおけるスワップサヤ取り戦略とは、異なるFX業者間で同一通貨ペアを両建てすることで、スワップポイントの差益を狙う投資手法です。両建てとは、同じ通貨ペアを同時に買いと売りで保有すること。通常、両建てはリスクヘッジを目的として行われますが、スワップサヤ取り戦略では、この両建ての性質を利益創出に活用します。
具体的には、スワップポイントの受け取り額が大きいFX業者で買いポジションを、スワップポイントの支払い額が小さい(または受け取り額が大きい)FX業者で売りポジションを建てることで、スワップポイントの差額を利益として獲得することを目指します。
スワップポイントの仕組みとサヤ取りの原理
スワップポイントとは、異なる国の金利差によって発生する、ポジションを翌日に持ち越す際に発生する金利調整額のことです。例えば、日本円(JPY)とオーストラリアドル(AUD)の金利差を考えてみましょう。もしオーストラリアの政策金利が日本の政策金利よりも高ければ、オーストラリアドルを保有する方が金利収入を得られます。逆に、日本円を保有する方が金利支払いが発生します。
FX業者では、この金利差を反映したスワップポイントを、ポジションを保有しているトレーダーに付与または徴収します。スワップポイントは、FX業者によって設定が異なります。これは、各FX業者が、インターバンク市場から調達する金利や、自社のリスク管理、顧客へのサービスの一環として、スワップポイントに独自の調整を加えているためです。
スワップサヤ取り戦略は、このFX業者によるスワップポイント設定の差異を利用します。例えば、あるFX業者Aでは、USD/JPYの買いポジションに対して1日あたり+10円のスワップポイントが付与されるとします。一方、別のFX業者Bでは、同じUSD/JPYの買いポジションに対して1日あたり-5円のスワップポイントしか付与されない(あるいは支払いが発生する)とします。この場合、FX業者Aで買いポジションを、FX業者Bで売りポジションを建てることはできません。なぜなら、通貨ペアの片方を売ると、もう片方も必ず買うことになるからです。
スワップサヤ取り戦略では、同一通貨ペアの買いポジションをスワップポイントの受け取り額が多い業者Xで、売りポジションをスワップポイントの支払い額が少ない(あるいは受け取り額が多い)業者Yで、それぞれ同時に建てることを目指します。例えば、USD/JPYで、業者Xでは買いスワップが+10円、業者Yでは売りスワップが-5円(つまり、買いスワップが+5円)だったとします。この場合、業者Xで買い、業者Yで売ると、1日あたり(+10円)+(+5円)=15円のプラススワップを得られる可能性があります。
しかし、現実には、同一通貨ペアで両建てを行った場合、スプレッド(買値と売値の差)とスワップポイントの差を考慮する必要があります。
スワップサヤ取り戦略の具体的な方法
スワップサヤ取り戦略を行うには、以下のステップが必要です。
1. 複数FX業者の選定
まず、スワップポイントの付与率(または支払い率)が異なる複数のFX業者を選定します。複数の業者を比較検討し、スワップポイントの差が大きいペアを探すことが重要です。
2. 通貨ペアの選定
次に、スワップポイントの差が比較的一定している通貨ペアを選びます。一般的に、高金利通貨と低金利通貨の組み合わせ(例:AUD/JPY、NZD/JPY、USD/JPYなど)がスワップポイントの差が大きくなる傾向があります。
3. 両建てポジションの構築
選定した通貨ペアについて、一方のFX業者で買いポジションを、もう一方のFX業者で売りポジションを、ほぼ同時に構築します。ここで重要なのは、両建ての数量を同量にすることです。これにより、為替レートの変動による損失を相殺することができます。
4. スワップポイントの差益の獲得
ポジションを翌日に持ち越すことで、スワップポイントの差額が利益として蓄積されます。この差益を一定期間積み重ねることで、利益を確定させます。
5. リスク管理と決済
スワップサヤ取り戦略は、為替レートの変動リスクを最小限に抑えることが目的ですが、完全にゼロになるわけではありません。スプレッドやスワップポイントの急な変更、FX業者の倒産リスクなども考慮に入れる必要があります。定期的にポジション状況を確認し、利益確定や損切り(相殺)のタイミングを見極めることが重要です。
スワップサヤ取り戦略のメリットとデメリット
メリット
- 為替レートの変動リスクを低減できる:同一通貨ペアで両建てを行うため、為替レートがどちらに動いても、その影響は相殺されやすくなります。
- 比較的安定した収益が期待できる:スワップポイントの差益が主な収入源となるため、短期間で大きな利益を狙うのではなく、コツコツと利益を積み重ねる戦略と言えます。
- FX初心者でも取り組みやすい:為替レートの予測が不要なため、FXの知識が浅い方でも挑戦しやすい側面があります。
デメリット
- スプレッドによるコスト:両建てを行う際には、それぞれのFX業者でスプレッドが発生します。このスプレッドが、スワップポイントの差益を圧迫する可能性があります。
- スワップポイントの変動リスク:FX業者によるスワップポイントの付与率(または支払い率)は、予告なく変更されることがあります。これにより、当初想定していた差益が得られなくなるリスクがあります。
- FX業者の信頼性リスク:複数のFX業者を利用するため、万が一、利用しているFX業者に問題が発生した場合、資金が失われるリスクがあります。
- 証拠金維持率の管理:両建てを行うと、それぞれのポジションで証拠金が必要となります。複数のポジションを管理するため、証拠金維持率の管理には注意が必要です。
- キャンペーンや制度変更のリスク:FX業者が提供するキャンペーンや、スワップポイントに関する制度が変更されることで、戦略の前提が崩れる可能性があります。
- 自動売買システム(EA)の利用:スワップサヤ取り戦略は、手動で行うには手間がかかるため、自動売買システム(EA)を利用するトレーダーもいます。しかし、EAの選定や設定も重要であり、安易な利用はリスクを伴います。
スワップサヤ取り戦略を成功させるための注意点
スワップサヤ取り戦略は、一見ローリスク・ローリターンに見えますが、成功させるためにはいくつかの注意点があります。
- スプレッドの最小化:スプレッドの狭いFX業者を選ぶことは、コストを抑え、利益を最大化するために不可欠です。
- スワップポイントの継続的な監視:FX業者のスワップポイントは常に変動する可能性があるため、定期的にチェックし、有利な条件が維持されているか確認する必要があります。
- 十分な資金力:両建てを行うには、それぞれのポジションで証拠金が必要となります。余裕を持った資金で運用することが、ロスカットのリスクを低減します。
- 信頼できるFX業者の選定:金融庁の登録を受けている、信頼性の高いFX業者を選ぶことが重要です。
- 情報収集:FX業界のニュースや、各FX業者の発表などを常にチェックし、スワップポイントに影響を与える可能性のある情報を把握しておくことが大切です。
- レバレッジの管理:レバレッジを高く設定しすぎると、わずかな為替変動でもロスカットされるリスクが高まります。
- 税金面への配慮:FX取引で得た利益には税金がかかります。確定申告など、税金面についても事前に理解しておく必要があります。
まとめ
FXのスワップサヤ取り戦略は、異なるFX業者間でのスワップポイントの差益を狙う、比較的リスクを抑えながら収益を目指せる投資手法です。しかし、スプレッドによるコスト、スワップポイントの変動リスク、FX業者の信頼性リスクなど、考慮すべきデメリットも存在します。この戦略を成功させるためには、慎重なFX業者の選定、スプレッドの最小化、スワップポイントの継続的な監視、そして十分な資金管理が不可欠です。
安易に「絶対儲かる」と捉えるのではなく、リスクを十分に理解した上で、ご自身の投資スタイルに合っているかを慎重に判断することが重要です。また、少額から試すなど、リスクを管理しながら学習していく姿勢が求められます。
